DJI、空飛ぶ3Dプリンター「FabricAir M2」発表—飛行中にインフラを修復

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ドローン業界の最大手DJIが、世界初となる飛行中に3Dプリンティングを実行できる産業用ドローン「FabricAir M2」を2026年1月15日、ラスベガスで開催されたCES 2026で発表しました。この革新的な技術は、インフラの老朽化や災害時の緊急修復という社会課題に対する画期的なソリューションとして注目を集めています。

米国では現在、7万以上の橋が構造的な欠陥を抱えており、修復には莫大なコストと時間がかかります。従来は足場を組んで人が作業する必要があり、数日から数週間を要していました。FabricAir M2は、このプロセスを数時間に短縮できる可能性を秘めています。

空中で「造形」する革新技術

FabricAir M2の最大の特徴は、飛行しながらUV硬化樹脂を使った3Dプリンティングを実行できる点です。MIT Media LabのMediated Matter GroupとCarbon3Dとの共同開発により実現したこの技術は、単なる概念実証ではなく、商用化を前提とした製品として設計されています。

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技術的な仕様を見ると、その先進性が際立ちます。ドローンは最大8.5kgのペイロード(材料タンクを含む)を搭載可能で、0.8mmと2.0mmに切り替え可能なデュアルノズルシステムを採用。使用する材料はUV硬化型エポキシ樹脂やポリウレタン系複合材で、405nm波長のLEDアレイ(120W)により2〜5秒で硬化します。

特筆すべきは、GPS/RTK(リアルタイムキネマティック測位)を併用することで±0.5mmという高精度な造形を実現している点です。さらに、6軸ジンバル制御により、風速±15度の条件下でも±0.3mmの精度を維持できます。これは屋外での実用性を考慮した重要な機能といえるでしょう。

AIが損傷を自動認識して補修形状を生成

FabricAir M2のもう一つの革新は、AIを活用した自律的な補修プロセスです。搭載されたLivox HAP LiDARとステレオビジョンカメラにより、損傷部をリアルタイムで3Dスキャン。独自開発の「RepairPath AI」が損傷を認識し、必要な補修形状を平均0.8秒で自動生成します。

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処理を担うのはNVIDIA Jetson Orin NXを2基搭載したシステムで、TensorFlow 2.14ベースの損傷認識モデルが実装されています。「Adaptive Layer Technology」と呼ばれるAI駆動の技術により、表面形状に追従した積層が可能になり、複雑な形状の補修にも対応できます。

さらに注目すべきは、複数機体の協調動作機能です。大規模な損傷に対しては、複数のFabricAir M2が連携して作業することで、より効率的な補修が可能になります。通信には5G(Sub-6GHz)を採用し、最大8kmの伝送距離を確保しています。

実用化に向けた具体的な動き

すでに実用化に向けたスケジュールも明確になっています。2026年第3四半期には米国運輸省との実証実験がカリフォルニア州の5箇所の橋梁で開始される予定です。欧州でもEASA(欧州航空安全機関)が認証プロセスを開始しており、グローバルな展開が見込まれています。

商用販売は2026年第4四半期に予定されており、価格は基本パッケージが47,500ドル(約700万円)、完全自律飛行版が68,000ドル(約1,000万円)。既に北米・欧州の12の電力会社と6つの建設企業が予約を入れているといいます。

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インフラ保守と建設業界の未来を変える

FabricAir M2がもたらす影響は単なる技術革新にとどまりません。高所作業における人的リスクの大幅な削減、災害時の緊急復旧速度の向上(従来比80%短縮の試算)、そして深刻化する建設業界の労働力不足への対応策として期待されています。

使用される材料「EPX 150 Aerial」は、引張強度65MPa、-40°Cから+95°Cの使用温度範囲を持ち、加速試験データでは10年以上の屋外耐久性が確認されています。環境面でもVOC規制に適合し、25%の生分解性を持つなど、持続可能性にも配慮されています。

ドローン技術と3Dプリンティングの融合は、これまで多くの研究機関で試みられてきましたが、商用レベルでの実現はFabricAir M2が初めてです。この技術が普及すれば、インフラメンテナンスのあり方が根本から変わる可能性があります。老朽化が進む世界中のインフラに対して、より迅速で安全、そして効率的な保守が可能になる未来が、すぐそこまで来ているのかもしれません。

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