ArduinoとRaspberry Piが初の共同開発ボードを発表、AIとIoTを融合

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メイカームーブメントを牽引してきた2大巨頭、ArduinoとRaspberry Pi Foundationが、ついに歴史的な協業を発表しました。CES 2026で公開された「Arduino Pi Fusion X1」は、両プラットフォームのエコシステムを統合し、エッジAIとIoTの新時代を切り開く次世代開発ボードです。合計3,000万人以上とされる両コミュニティの開発者にとって、これは単なる新製品の発表ではなく、メイカー文化そのものの進化を象徴する出来事といえるでしょう。

統合アーキテクチャがもたらす革新

Arduino Pi Fusion X1の最大の特徴は、デュアルコアアーキテクチャの採用です。メインプロセッサには最新のRaspberry Pi RP2350C(Cortex-M33F、150MHz、デュアルコア)を搭載し、これに専用のAIコプロセッサ「Arduino Neural Engine ANE-400」を組み合わせています。このANE-400は8 TOPS/Wという高い電力効率を実現し、従来のArduinoと比較して100倍の推論性能を発揮します。

メモリは8GB LPDDR4X RAM、ストレージは32GB eMMCをオンボードで搭載し、最大1TBまで対応するmicroSDスロットも備えています。通信機能も充実しており、Wi-Fi 6EとBluetooth 5.4に加え、スマートホーム標準規格のThread/Matterをネイティブサポート。さらにLoRaWAN拡張モジュールスロットやPoE+対応のギガビットイーサネットも搭載し、あらゆるIoTアプリケーションに対応できる設計となっています。

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3つのブートモードが実現する柔軟性

このボードの革新的な機能の一つが「ハイブリッドブートモード」です。Arduino互換モード、Raspberry Piモード、そして両者の機能を同時に活用できるハイブリッドモードの3つを切り替えることができます。これにより、Arduinoの得意とするリアルタイム制御と、Raspberry Piの強力な演算能力を、プロジェクトのニーズに応じて使い分けることが可能になります。

開発環境も統合されています。新たに提供される「Unified Maker Studio」は、Arduino IDEとRaspberry Pi Picoの開発環境を融合させたもので、C/C++、Python、Rust、JavaScriptなど多様な言語に対応。TensorFlow Lite Micro、Edge Impulse、Arduino Cloud IoT APIなど、主要なAI・IoTフレームワークとも完全統合されています。

産業用途への本格展開

注目すべきは、このボードが産業グレードの仕様を満たしている点です。-40°C~+85°Cの動作温度範囲を保証し、CE/FCC/RoHS認証も取得済み。平均消費電力は0.8W(AI推論動作時)、スリープモードでは50μWという低消費電力を実現しており、バッテリー駆動のIoTデバイスにも最適です。

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既にSiemensやABBといった産業機器メーカーが予知保全システムへの採用を検討中で、John Deereは精密農業センサーノードとして5万台の試験導入を計画しています。公式には、スマート温室管理システム、産業機械振動解析、Matter対応スマートホームハブ、自律移動ロボットなど、多様なサンプルプロジェクトが提供される予定です。

メイカーコミュニティと教育への影響

教育分野での活用も期待されています。2026年第2四半期から、米国と欧州の200以上の大学でSTEM教育カリキュラムに採用される予定で、学生たちがホビーレベルから産業レベルまでシームレスに学習できる環境が整います。

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今後の展望と可能性

Arduino Pi Fusion X1は、2026年3月に開発者向けベータ版の出荷が開始され、一般販売は6月を予定しています。価格は標準版が$89、産業グレードのPro版が$129と、比較的手頃な設定です。初年度の出荷目標は50万台とされており、両コミュニティの期待の高さがうかがえます。

さらに注目すべきは、オープンソースへのコミットメントです。ハードウェア設計図は2026年9月にCERN OHL v2ライセンスで公開予定、ファームウェアは既にGitHubでApache 2.0ライセンスで公開されています。このオープンな姿勢が、コミュニティ主導のイノベーションをさらに加速させるでしょう。

ArduinoとRaspberry Piという2つの巨人の協業は、メイカームーブメントが新たなステージに入ったことを示しています。エッジAIとIoTの融合が、ホビーから産業まで、あらゆる領域でイノベーションを生み出す未来が、すぐそこまで来ています。

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