Arduinoが産業IoT市場に本格参入する新製品「Opta Micro」を、CES 2026で発表しました。これまで教育やホビー分野で圧倒的なシェアを持つArduinoが、ついに産業グレードの本格的なIoTコントローラーをリリースします。最大の特徴は、長距離通信規格のLoRaWANとスマートホーム標準のMatterプロトコルを同時搭載した点。従来は数十万円規模の投資が必要だったPLC(プログラマブルロジックコントローラー)とIoTゲートウェイの機能を、わずか149ユーロ(約2万5千円)の単一デバイスで実現します。
産業用途に特化した堅牢なハードウェア設計
Opta Microの心臓部には、STM32H747XIH6デュアルコアプロセッサが搭載されています。Cortex-M7コア(480MHz)とCortex-M4コア(240MHz)の2つのプロセッサが協調動作することで、リアルタイム制御とIoT通信処理を同時に高速実行できます。
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産業用I/Oも充実しており、デジタル入力8系統、アナログ入力4系統(0-10Vまたは4-20mA対応)、そして250VAC/5Aまで対応するリレー出力4系統を備えています。動作温度範囲は-40°C~+85°Cと、過酷な工場環境や屋外設置にも対応。IP65等級の防塵防水性能とDINレール取付機能により、制御盤への組み込みも容易です。
LoRaWANとMatterのデュアルプロトコル対応
本製品の最大の革新は、異なる2つの無線通信規格を統合した点にあります。LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)は、最大15kmの長距離通信が可能な省電力無線技術。工場敷地内の遠隔地や、農地、インフラ監視など広範囲のセンサーネットワーク構築に最適です。内蔵されるSemtech SX1262チップは868/915MHz帯に対応し、Class A/Cデバイスとして動作します。
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一方のMatter over Threadは、スマートホーム機器の統一規格として注目される新しいプロトコル。Silicon Labs EFR32MG24チップを搭載し、工場内の近距離デバイス(最大50台)をメッシュネットワークで接続できます。これにより、工場の外部センサーはLoRaWANで、内部の製造装置はMatterで管理するといった柔軟なネットワーク構成が可能になります。
特筆すべきは、LoRaWAN経由でのOTA(Over-The-Air)ファームウェアアップデート機能。従来は有線接続が必要だった遠隔地デバイスのメンテナンスが、無線で完結できるようになります。
Arduino IDEで産業用PLCをプログラミング
Opta Microは、IEC 61131-3規格準拠のPLC機能を搭載しながら、プログラミングは使い慣れたArduino IDE、C/C++、さらにはMicroPythonでも可能です。30万以上のArduinoライブラリ資産を活用できるため、開発期間の大幅な短縮が期待できます。
エッジAI推論エンジン(TensorFlow Lite Micro対応)も搭載され、最大300KBのモデルをデバイス上で実行可能。予知保全や異常検知などのAI応用が、クラウド接続なしで実現できます。セキュリティ面では、ATECC608Bセキュアエレメントによる暗号化とSecure Boot機能により、産業用途に求められる高いセキュリティ基準を満たしています。
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中小製造業のDXを加速する価格破壊
従来の産業用IoTシステム導入には、PLCで10~30万円、IoTゲートウェイで5~15万円、さらに設定作業費用が必要でした。Opta Microはこれを149ユーロの単一デバイスで実現し、Arduino Cloud IoTとの統合によりゼロコンフィグでクラウド接続が可能です。
2026年3月からの量産出荷開始に向けて、スマート農業、ビル管理、遠隔監視システムなど多様な分野での採用が予想されます。初年度出荷目標は50万台。教育機関向けには、10種類のセンサーを同梱したキットも同時リリースされる予定で、次世代の産業IoT人材育成にも貢献しそうです。
Raspberry Piベースの産業ソリューションとの競合が激化する中、Arduinoのオープンソースエコシステムと使いやすさが、産業IoT市場にどのような変革をもたらすのか、今後の展開に注目が集まります。


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